ふくらむみっしつ
「第一問の結果は全員おなかが…」
「まだ、ちょっと食べ過ぎた程度ね…」
「嫌な予感がするわ…」
「ど、どうしよう、こんなのやだよぅ」
「しょうがないでしょ…やらないとどっちにしろみんな死ぬことになるわ」
「…どっちにしろ、全員で出ることはできないわ」
「ど、どうしてふたりともわたしだけ答えられないようにするの…?」
「…別に、たまたまじゃないの?」
「あなたが勝手に答えないだけでしょう。それより、妊婦みたいになってるわね、おなか」
「う、うぅ…だいぶ、苦しいですけど、その程度って感じですけど…」
「ふぅん…まだいけそうね」
「!? それは、どういうい」
「次の問題出せ!!すぐだ!!!!」
「まって!ふたりとも…!!」
おなかが、どんどん膨らんでいってる。
さいしょはちょっと張るくらいだったのに、クイズに失敗するたびに、どんどんどんどん…。
ぜんぶ四択なのに、正解はほかの二人がすぐに答えちゃって、わたしはハズレばっかりで……。
いつのまにかおなかは妊婦さんみたいになってて、服も限界で締め付けられて苦しい…あの二人はまだ、そんなに膨らんでないのに!!
このままじゃ、このままじゃわたしは死んじゃうかもしれない…いや、きっとあの二人に殺されちゃう。
なんとか、なんとか答えなくちゃ、死にたくないから、答えなくちゃ…あの二人を蹴落とさなくちゃ。
このままもっとおなかが膨らんでいく前に、どうにか、どうにかあの二人を……。
「せ、せいかい!正解をとれましたよ!!」
「うっぐぇ、こんな苦しいの…!?」
「さっさと答えないからそうなるのよ」
「ふ、ふふ、得意なんですよ、歴史系の問題は…!!」
「ちっ、苦手科目だったからやられた…」
「次からはちゃんとしなさいよ。さっさと出るためにはあの子を落とすのが一番早いんだから」
「わかってる!!」
「あは、あはははは、死にたくないですもん、ぜったいに、ぜったいに、ひひ、ひふひひひひひ」
苦しい苦しい苦しい、服が、裂けていってる、音がしてる、感触がする…。
いやだ、もういた、死にたくない、死にたくないの死にたくないの死にたくないの!!
お腹が苦しくてしょうがないもういやどうして、あの二人はまだあれだけしか膨らんでないのにどうしてわたしだけこんなに苦しいの?
ああ、あああああ、服が、どんどん裂けていってる、きっともうげんかいなんだ死にたくない。
いや、いやだ、くるしい、死んじゃいそう、死にたくない、答えたくない答えがわからないどれがせいかいなの!?
「やだ、やだやだやだやあだああああああああ!!
しにたくないしにたくないのしにたくないのおおおおおおおああああああああああああ!!!!!!!」
「や、やだぁああああ!死にた、死にたくない!死にたくな、ぃやあああああああああ!!!!!!!」
「諦めて!あたしだって死ぬのは嫌なの!!」
「言うだけ無駄よ。さっさと最終問題クリアしてこんなところからオサラバしましょう」
「やだ、やだあああああああああああ!!!!こんなのいや、おなかが、たすけ、いや、しにたくないたすけ」
ぱん
「…は、はは、ほんとにはれつした…。風船みたいに、あはは、はははは」
「まっかね、私たち。ふふ、あの子の血でべったりよ」
あの子が破裂した。
風船みたいに、あっけなく「ぱん」って音と一緒に。
目の前で。
これで助かる、そう思った。なのに。
なのに、あたしのお腹まで膨らみ始めた。
「な、なんでだよ!もう終わったんだろ!?」
あたしがそう言ったところで膨らむのは止まらない。
いやだ、あたしまであの子みたいに膨らんで、破裂して、死ぬ?
嫌だ、そんなのは嫌だ!!
あたしは勝ったじゃないか!!
ルール通りに勝ったじゃないか!!!!
なのに、なのに!なのに!!
どんどん膨らんでいく…!
もうすぐ、あの子が破裂したのと同じくらいに……!!!!
いやだ、助けて!
「助けてッ!!!!!!!!」
…起き上がればそこは自室のベッドの上。
お腹はいつもの通り、ぺたんこのまま。
「夢…」
今日も、またあの夢だ…。
あの日からずっと見続けている、夢だ……。
あの日以来ずっとあそこを探している。
あの子たちはあんなになってとても苦しそうだったけど、私だけはそれを経験できなかった。
…正直に言おう。
私は、私も、あんな風にぎりぎりまで膨張してみたい。
破裂する直前まで、骨がイカレる限界まで、服が裂けてしまうその瞬間まで!!
あれから、一緒に帰ったあの子は風船も質問も閉所も肉もダメになった。
私とはまったく正反対に。
あの子に聞きたかったけど、流石にそれはできないから。
だから、私は、再びあの場所で、今度は私もあの子たちのように膨らむために…!!!!